
書籍の概要
「ジェイソン流 お金の増やし方」は、著者とその家族全員が一生生活に困らないほどの資産を築いた投資法について書かれた金融書籍です。
その投資法を実践するために必要なこととして、著者はシンプルな表現を使っています。
節約して、コツコツ入金して、待つ
拍子抜けした方もいると思いますが、これはどんな人でもできる再現性の高い投資法だと述べています。

えっ!それだけ? 確かに誰でもできそうだね
誰でも可能なことなのになぜか実践する人は少なく、実践しても長続きしない人が多いと著者は嘆いています。
投資は難しいもの。投資はギャンブル。投資は一部のお金持ちがやること。
あなたが投資に対してこのような印象を持っているとしたら、この書籍を手に取ってください。
あなたの投資に対するイメージが変わるはずです。
書籍の構成は、要約すると以下のようになっています。
第2章 節約について
第3章 お金の増やし方について
第4章 お金との向き合い方について
資産運用の具体的なノウハウは主に第2章と第3章に書かれています。
金融の専門用語や難しい数式が多く出てくるわけではありません。
お笑い芸人らしくユーモアのある親しみやすい文体なのでとても読みやすいです。
私は2時間くらいで一気に読むことができました。
こんな人に読んでほしい!
投資を始めたばかりの方や、投資に興味があるけど何から始めればいいのか分からないという方におすすめしたい書籍です。
投資をしていない人は、一番のムダ遣いをしている人だよ!
著者は、投資をせず銀行にお金を預けていたことで失った価値は大きいといいます。

投資より銀行にお金を預けた方が安心じゃない?価値を失うってどういうことかしら?
もしかしたら投資初心者の方にとっては理解しずらい部分かもしれません。
私たち日本人が今まであたり前に行ってきた銀行預金という固定概念が覆される冒頭のポイントです。
疑問に思った方はこの部分を理解するだけでも大収穫ですし、間違いなく金融知識のレベルは向上しています。
この書籍を最後まで読み終えたとき、あなたのお金に対する考え方は180度変わっているかもしれません。
著者はどんな人?
厚切りジェイソンさんといえば、『Why Japanese people!?』のフレーズで有名ですが、著者の肩書きはお笑い芸人だけではありません。
IT企業の取締役でもあり、家族全員が一生安心して暮らせるほどの資産を築いた投資家でもあります。
15年の投資歴を持ち約2年前に経済的自立を果たしています。
つまり、FIREのFinancial Independence(経済的自立)の部分を成し遂げた稀有な人といえます。
本人はFIREを目指して投資をしてきたわけではないと述べています。
ただ、著者のお金に関する考え方や知識は、FIREを目指す方にとっても有効な手段として活用できます。
興味深かったポイント
ジェイソン流のお金の増やし方を簡単にまとめると以下の2点になります。
②米国株のインデックスファンドに長期・分散・積立投資する
インデックスファンドについては、VTIと呼ばれる米国のETF(上場投資信託)をメインに資産運用されています。
それは以下のような理由からです。
・成長性のある中小企業が含まれている
・グローバルに活躍する企業が多い
・組入銘柄が変わる
その他にも複利を活用する、NISAなどで税金対策をする、副業をする、個別株や不動産には手を出さないといったことが資産運用のポイントとして書かれています。
ただこれらの内容は資産運用をテーマにした金融書籍の多くに書かれているので、特別に目新しいものではありません。
筆者がこの書籍を読んで一番興味深いと感じたのは、著者が自信を持って米株を推す理由です。
その理由2つを紹介します。
理由その1
著者は日本とアメリカの経営者の違いを例に挙げて、米株を推す理由を説明しています。
アメリカのトップ企業の経営者たちは自社の株価を上げることをとても重要視しています
米国の時価総額が大きな企業のCEOは、株価の上昇が彼らの収入にも比例し、経営者自身も大株主だからこそ株価を上げるのに必死になると著者はいいます。
報酬をもらうことでさらに株価を上げてくれる経営者がいることが明確にわかっていると、彼らの高い報酬も納得できるし、投資する側として、そういう経営者がいることはある意味安心材料だよね
一方、日本の企業は株価とCEOの収入が見合わないことも多い。それどころか日本では企業のトップがたくさんのお金をもらうと批判されやすいと指摘しています。
経営者の欲望に直結していない日本企業の株は判断しにくいところがあるというのが、僕としてはリスク要素に思えてしまうんだ
アメリカは欲望の塊だと冗談めかした上で、次のように結論づけています。
この貪欲さがアメリカンドリームの基本だと思うし、これがベースにある限りアメリカは成長していくと思う
私たち投資家と経営者の利害が一致しているのは、投資先を選ぶ上でポイントになりそうです。
理由その2
著者が米株を信頼するもう一つの理由は、過去のデータを調べて納得したからだといいます。
じつは著者はデータを調べたり比較したりすることが大好きなデータマニア。
暇さえあればエクセルをいじっているようで、本人いわく「技術者としての性」だそうです。
ダウ平均株価が算出された始めた1896年から2020年までのチャートを見たとき、アメリカは過去に世界恐慌、ブラックマンデー、同時多発テロ、リーマンショックと大きな暴落がありました。
一番悲惨だった世界恐慌では株価が1/10まで下がりましたが、それでも25年かけて暴落前の株価に回復しました。
暴落のたびに復活をして、アメリカ市場は現在でも右肩上がりの成長を続けていると説明しています。
暴落があったとしても慌てずに、ドルコスト平均法でコツコツと長期間買い続けて、待ち続けていれば、大きな資産を生み出すことができる
アメリカ市場の暴落に対する強さを過去のデータが裏付けていたということです。
まとめると著者が投資先として米株を選択した背景には、アメリカ人の貪欲さとアメリカ市場のタフさがあります。
ちなみに筆者も米株で資産運用しています。
著者と同じように米国市場の成長性を信じたからですが、過去がそうだからといって未来が保証されるわけではありません。
そこは肝に銘じて市場と向き合うようにしています。
気になったポイント
前述したように、著者はVTIというETFをドルコスト平均法で積み立てていく方法で運用しています。
ドルコスト平均法とは、一定額を決めて定期的に投資していく方法のことです。
書籍では、時間の分散がリスクヘッジになることからドルコスト平均法で投資することをすすめています。
しかし、一括で投資することをすすめている書籍もあります。
たとえば、書籍『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』の著者である山崎元さんは一括で投資することをすすめています。
その理由は以下の2点です。
投資信託と違ってETFは基本的に購入手数料が発生します。(購入手数料のかからないETFもあります)。定期的に買えばその都度手数料がかかります。
②持っているお金を寝かせないですむ
現金で持っていることが機会損失につながるということです。一括投資できるお金があるのなら、最初に全部投資してしまってお金に働いてもらう期間を長くしたほうがよいという考えです。
ドルコスト平均法と一括投資のどちらを選択すればいいのかについては、個人的に気になるところです。
個人的には、どちらが正解というよりも相場の状況や手持ちの現金によってケースバイケースだと筆者は感じています。
まとめ
書籍には、投資のプロが実践しているような高度な知識やテクニックについて書かれているわけではありません。
節約して、コツコツ入金して、待つ
誰にでもできる3つの作業を淡々と実践することを著者は求めています。
しかし、実際に行動に移すのはほんの一握りの人であると著者は嘆いています。
その理由については個人的な見解になりますが、日本人がしっかりとしたお金の教育を受けていないことが関係しているのかもしれません。
お金の知識が乏しいゆえに投資に対する誤解や偏見に翻弄されやすく、はじめの一歩を躊躇しがちであると筆者は感じています。
それが事実だとしたら、とても残念でもったいないことです。
この書籍があなたのお金の知識を豊かなものにしてくれるはずです。
著者は私たち読者に対して声高に訴えかけています。
自分の人生をしたくないことだけで埋め尽くすのはやめよう。経済的自立をして、本当の意味で自分の人生の舵をとろうよ
自分の人生の舵取りをいつまでも国や会社に委ねていては経済的自立は成し得ません。
本当の意味での自由や幸せが何であるかを、この書籍は気づかせてくれます。
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